Collection: もの派

ROIDWORKSGALLERY COLLECTION

MONO-HA

もの派

ものと、空間と、
そのあいだ。

関根伸夫《位相―大地》1968年、神戸市立須磨離宮公園の展示風景。写真:村井修。Courtesy of the artist/Wikimedia Commons、CC BY-SA 4.0。トリミング・色調変更なし。
関根伸夫《位相―大地》(1968)、神戸市立須磨離宮公園。写真:村井修(Osamu Murai)。Courtesy of the artist/Wikimedia Commons、CC BY-SA 4.0。写真はトリミング・色調変更をせず掲載しています。参考図版(販売作品ではありません)。

ものと、場所と、見る人。その関係を見つめ直す。

石、土、木、鉄、紙。身近な素材と空間の関係を問い直した「もの派」は、戦後日本美術を考えるうえで重要な動向です。このコレクションでは、関根伸夫をはじめ、もの派に関わる作家の仕事を、その背景とともにご紹介します。

もの派とは

「もの派」は、1960年代末から1970年代前半にかけて日本で展開した美術の動向です。自然の素材や工業製品を用い、素材そのものの性質や、互いに接することで生まれる関係に目を向けました。共通の規約のもとに結成された団体ではなく、異なる考えを持つ作家たちの実践を指す呼び名です。

形を作ることから、関係を見いだすことへ

もの派の作品では、素材の重さ、支え合い、隔たり、置かれた場所などが重要になります。素材を組み合わせ、置き、場に働きかけることで、ものともの、ものと人との関係が現れます。見慣れた物質や空間を、あらためて自分の感覚で捉え直す視点が、その魅力の一つです。

関根伸夫《位相-大地》が開いた問い

1968年、関根伸夫は神戸の須磨離宮公園で《位相-大地》を発表しました。地面に円筒形の穴を掘り、取り出した土を、その隣で穴と対応する円柱の形に積み上げた作品です。大地を掘り、移すという行為によって、空間と物質の関係が姿を現しました。この作品はもの派の成立を促す重要な契機となり、李禹煥による考察は、その理論的な展開を支えました。

もの派をめぐる主な作家

もの派は、入会制度や統一した綱領をもつ団体ではありません。関根伸夫、李禹煥、菅木志雄、小清水漸、吉田克朗、成田克彦をはじめ、榎倉康二、高山登、原口典之などが、この動向やその周辺を語るうえで重要な作家として挙げられます。それぞれが素材と空間に向き合いながら、異なる表現を展開しました。

  • 関根伸夫:1968年の《位相-大地》によって、もの派の成立に重要な契機をもたらしました。形の変化や見え方を通じて、物体と空間の捉え方を探究しました。
  • 李禹煥:石、鉄、ガラスなどを組み合わせる《関係項》シリーズで、もの同士や場所との関係を問いかけました。著述の面でも、もの派の理論的な展開を支えました。
  • 菅木志雄:木や石、金属などを置く、並べる、曲げるといった行為から、素材同士や場所、人との関係を探りました。ものが置かれることで生まれる状況に目を向けています。
  • 小清水漸:《かみ》シリーズでは、紙と石の組合せから軽さと重さ、表面の質感の違いを際立たせました。素材の性質に向き合いながら、彫刻とは何かを問い続けています。
  • 吉田克朗:角材と鉄板を用いた《Cut-off No.2》などで、素材の組合せや重力の働きを示しました。その後は転写などの実験を経て、絵画表現にも展開しました。
  • 成田克彦:木炭を用いた《SUMI》シリーズで知られます。のちには平面作品などにも取り組み、形式や素材を変えながら実験を重ねました。
  • 榎倉康二:もの派と関わりながら、独自に身体と物質の接触を追究しました。浸透やにじみなどの現象を、絵画、写真、版画、インスタレーションへと展開しました。
  • 高山登:枕木、鉄、ワックスなどを用い、素材の強い存在感と、それらが置かれる空間との関係を探りました。大規模なインスタレーションに加え、版画やドローイングも制作しています。
  • 原口典之:廃油や金属などの工業素材を用い、物質と周囲の環境を結びつけました。《オイル・プール》では、油の表面に映る人や風景も作品の経験に取り込まれます。

また、高松次郎は、視覚や実在をめぐる先行した実験と、多摩美術大学での指導を通して、関根らに影響を与えた重要な作家です。もの派の成立へつながる背景を考えるうえで、その仕事も欠かせません。

参考資料:国立国際美術館「もの派―再考」、国立新美術館「李禹煥」、岩手県立美術館「菅木志雄展」、ピノー・コレクション《Paper》、神奈川県立近代美術館「吉田克朗展」、東京造形大学「成田克彦」展、東京国立近代美術館「榎倉康二」、宮城県美術館「高山登展」、横須賀美術館「原口典之・若江漢字」。

関根伸夫、その後の制作へ

関根伸夫(1942–2019)は埼玉県生まれ。多摩美術大学と同大学院で学び、1970年にはヴェネチア・ビエンナーレ日本館に参加しました。彫刻や絵画、版画に加え、公共空間の美術やランドスケープにも活動を広げた作家です。

ここでは、もの派の歴史的な活動と、その後の作家個人の制作を、それぞれの制作年と背景を通して紹介します。掲載する1989年の《G6-203 裏返るトーラス》は、もの派の成立期より後に制作された関根のミクストメディア作品です。一点ごとの素材や構成、画面の表情にも目を向けながらご覧ください。

解説の参考資料

関根伸夫《位相―大地》1968年、神戸市立須磨離宮公園の展示風景。写真:村井修。Courtesy of the artist/Wikimedia Commons、CC BY-SA 4.0。トリミング・色調変更なし。

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